裁判員裁判

夏の終わりになっていた

いよいよ裁判が始まるという時に

ヤクザの様な検事から、若い検事に変わった

変わった理由は聞かされなかった

 

その若い検事と初対面した

年齢は30歳そこそこ?くらいで、なんとも頼りない印象だ

しかし物腰はものすごく柔らかく、とても丁寧な対応だった

 

その検事に耳を疑う事を言われた

 

 

「実は、裁判官があなたの出廷を望んでいるのです。」

 

 

私は動揺して返答した

 

 

「でも、犯人は動機も認めたし、出廷する理由は無くなったと聞きましたが…」

 

 

「私もそう思うのですが、裁判官は今回は裁判員裁判である事から、裁判員が納得する裁判をしたい様なのです。なのに被害者が1人も出廷しないのは、どうにも物足りない。貴方(私)は犯人が動機を否認していた時は出廷する気でいた人なので、変わらず出廷して欲しい、と言い出したのです。

被害者の気持ちを考えてない、と私も思います。でももし出廷しなければ裁判官の印象を悪くし、判決に悪影響を与えるかもしれない、という可能性を否定する事は出来ません。」

 

私は絶句した

裁判を充実させるために、必須でもない被害者を裁判に引っ張り出す

そんな裁判官がいるのだ

 

めちゃくちゃ断りたかった

しかし、私1人の裁判ではない

他の被害者2人と一緒に起こした裁判なのだ

私が出廷しない事で、判決が甘くなるのはどうしても避けたかった

 

出たくないが、どうしてもと裁判官が言われるなら出る

でもこれ以上、晒されたくない

このまま静かにしていたい

私が出なくても、正しい判決が下ると信じている

 

検事に薦められ、その様な旨の手紙を裁判官に書いた

 

 

後日、出廷は不要と裁判官が判断したと検事から連絡があった

気持ちが伝わったようで、安心した

 

 

ただ、被害の内容に不明点があるので、もう少し詳しく聞いて欲しいとの事

 

その検事とまた面談する事になった

 

面談で聞かれたのは、

犯人が私の股間を触った時の状況だった

 

もっと詳細に教えて下さい

詳細も何も聴取にある通りなのだが、検事は

「手の角度はどのようでしたか?」

などと聞いてくる

 

手の角度?なんて覚えてる訳ないだろ

見てもないのに

心の中に黒い気持ちが広がりだした

 

検事は続けた

 

 

「犯人の手の角度を画像として裁判に提出したいのです

触られた時の手の角度を、やってみてもらえますか」

 

そんなの知らねえよ

馬鹿馬鹿しい

イライラしたが、この人達も仕事でやっているのだ

無理矢理納得させて、想像で手の形を作って教えた

それを事務官が撮影した

 

なんだこれ

この写真いる?

まるで嫌がらせだ

 

私は服の上から股間を触られた

それだけだが、これがもし強姦されていたらどんなことを聞かれるのだろう

そう考えたら背筋が寒くなった

警察や検察での聴取はこんなもんじゃない

もっともっと嫌な事を何回も何回も聞かれるのだ

 

性犯罪の被害者の9割は泣き寝入りする

そりゃ納得だ

股間触られただけなのに、これだもん

私だって強姦されたら泣き寝入りするかもしれない

 

でも訴えないと犯人は野放しのままになる

そしたら被害者が増えるかもしれない

それは許せない

 

強姦でも訴えたか? 

わからない

でも訴えたい

でも今の仕組みの中では、耐えられそうにないかも 

 

被害に遭った人が、勇気を持って訴えやすい環境がいる

訴えた被害者を国側は守る義務がある

もっと被害者をサポートする仕組みが要る

 

そう思う