不倫をやめた日

不倫相手とは、3年目の冬を迎えていた

彼は元上司だ

お互い趣味が美味いもん屋巡りだったため、

彼が上司になった後

仲間で飲みにいくうちに、流れで関係を持った

不倫は初めてだった

最初は罪悪感と背徳感でボロボロになったけど

そのうち慣れた

私が転職した後も

ズルズルと関係は続いていた

 

 

 

しかし急に2人の関係に変化が訪れた

彼が地方に飛ばされる事になったのだ

左遷の理由は不倫ではない

彼の部下が仕事で失敗したのだ

彼の管理能力が問われ、戒めに左遷が決まった

単身赴任だ

 

 

左遷を理由に彼は離婚する訳もなく

私にこう言った

 

 

「また向こうに遊びにおいでよ」

 

 

 

ただの一時的な関係なのだと気づいていた

未来の無い関係

家庭を壊す気は私にも無かった

でも、割り切れない気持ちはずっと燻っていた

3年間、ずっとずっと燻っていた

 

 

結婚願望が無かった訳ではない

独身の男性と付き合おうと努力した時もあった

何回も彼と別れようとした

でも経験豊富でマイペースな彼といると、

とても楽しかったのだ、楽だったのだ

 

 

一時的な関係だと割り切ってたつもりが

気づいたら好きになっていた

その気持ちは彼も同じだと思っていた

離婚しないのは子供がまだ小さいからだと

それだけだと、奥さんとほ関係は冷え切っている

気持ちは私にある、1番好きなのは私だ

そう思っていた、そう彼も言っていた

でも違った

ようやく気づいたのだ

 

 

 

夜中に電話したのは初めての事だった

むしろ無断で電話した事が初めてだった

いつも必ず事前に確認してから電話した

家庭を壊す気は無かったのだ、当たり前だ

 

 

でも犯人に襲われた直後はパニック状態だったので

一番信頼していた彼に電話してしまった

 

 

 

とにかく話したかった

それだけだったのだ

 

 

「今、話せない」

「襲われた」

「誰に?」

「わかんない、公園から男が出てきて」

「どういうこと?」

 

 

 

LINEでのやり取りを何回かしたが

彼はいっこうに電話をかけてこない

 

 

 

ここまで来て、さすがにわかった

この男は、私を愛してなんかいない

愛してるなら、すぐに電話をかけ直す

私はいきなり電話をかけた事などないのだ

しかも別れ際にほぼシラフだったのも彼は知っている

酒に酔った勢いでかけてきた訳ではないのも

わかっているはずだ

さっき別れたばかりなのに、いきなり

電話してきて襲われたと言っているのだ

なのに電話をかけてこない

 

 

この男は私を助けには来ない

この男は私に割く時間はないのだ

こんな時にでも電話に出ないのだ

私の急な電話には出ないのだ

信頼していた「彼」から、だだの「男」に

変わった瞬間だった

 

 

 

私はLINEでやりとりしていた手を止め

110番をした