被害者になった日

 

あれは12月頭の金曜日

私は会社の忘年会に出席していた

一次会が終り、二次会に流れ込み、

それでもまだ飲み足りなかった私は

別のバーで飲んでいた彼と合流した

 

バーでは1杯だけお酒を頼みあとは水を飲んで

締めのパスタまで食べほぼシラフな状態に戻った

 

午前2時ごろ

ようやく家に帰る気になったので

マスターにタクシーを頼んだ

ところが忘年会シーズン、1時間待ち

 

「え、どうしよっか」

 

すると、彼が言った

 

「俺、自転車で来てるから、

途中まで一緒に歩いて帰って、

そこから自転車を貸してあげるから、

乗って家まで帰りなよ」

 

バーと家との位置関係としては、こんな感じ。

 

バー       ⇒           彼の家(徒歩20分弱)

彼の家    ⇒           私の家(徒歩30分弱)

 

ちょっと遠いし

今まで自転車で帰ったことはなかったけど

頑張れば帰れない距離じゃないな

と私はその案を受け入れたのだった

 

彼の家まで歩いたので完全にシラフに戻り

自転車を借りて私は走り出した

大通りを抜け

近道の公園沿いの道を通る事に決めた

公園周辺は暗いけど

怖いという感情は一切なかった

きっと お酒の余韻が気を大きくさせていたのだろう

 

彼の自転車は白と青のストライプで

マウンテンバイクの様な形

とっても派手なものだ

私は久々に自転車に乗った事と

楽しかった夜の余韻に浸りながら

公園と線路に挟まれた狭い道路を

公園沿いに走った

 

公園を囲む様に植えてある街路樹が続く道で

公園の中は覗かないと見えない状態だ

道路には街灯が所々にしかなくとても暗い

 

そしてその街路樹が切れる地点に差し掛かった時

覆面を被った男が勢いよく飛び掛かってくるのが

ようやく確認できたのだった

 

そして次の瞬間には

自転車ごと道路に激しく叩き付けられていた

右の側頭部と右肘に鋭い痛みと衝撃を覚えた

ゴッと嫌な音がした

 

覆面の男が、意図的に、私と自転車を、倒した!!!

 

男が私の動きを抑えようと、馬乗りになってきた

男の下で抵抗しながら、私は悲鳴をあげ続けた

 

どれくらいの時間、そうしていたのだろうか

1分の様にも、30分の様にも感じられる

 

そして男は

私の股間を乱暴に服の上から触ってきたのだ

 

「終わった」

 

私の脳裏に浮かんだ言葉はこうだった

男の目的をようやく理解した

 

そして同時にその時ようやく、

ここは暗い狭い道路、人通りもない、午前2時半頃

事態は思ったよりも深刻だと理解できたのだった